VERSE812 [22AW -THE KING- HIGHNECK MOUTON COAT]

22aw最後の作品。

ようやくここまできましたね。

みなさま長いお付き合い本当にありがとうございました。

せっかくなので今シーズンの製作にあたり考えていたことや普段思っていることを織り交ぜながら最後の作品をご紹介させて頂こうと思います。長文なのでお時間ある時にお読みください。

商品だけご覧になりたいお客様はwebページに直行頂いた方がよいかと思います。

https://www.askyy-shop.com

というわけで、名残惜しいながら始めます。


「良いアイデアは屈強な制約の中でしか生まれない。」

クリエイションをする上で、一つだけ「確かな事」をあげるなら僕はこれを挙げます。

ここでも何回か呟いている自分自身の率直な言葉ですが、1行でまとめるならこれに帰結するかと思います。

制約という濁流の中で、その激しい負荷があるからこそ抜け出す術(アイデア)を身につけ、方法(デザイン)を見出す。

それは過去から今に至るまで様々な鍛錬をしてきたデザイン論で確信したことであり、大きな財産です。

穏やかな流れの中では、創造的と云えるものは生まれない。

白い紙とペンで自由にしていいよという”生易しい”環境であった場合、その状況下では生まれるものも生まれないと僕は考えています。

自然界の摂理と同じように、生存をかけた激しい競争や順応、そのストレスや制約から抜け出し、生き抜くために生物は進化してきたはず。

一般的に「無理」、「どうしようも出来ない」「ピンチ」、と思われるような物事もこのことを理解しているせいか、僕にとっては本当に、本当に貴重なことと感じるのです。

創造を与えてくれる貴重なきっかけにすぎないのですから。

「デザインやアイデアがネタ切れすることなんて一生ない」

と僕が言い切っているのは、そういった負荷や抵抗が心の中で常にかかっているからです。

時に意図して追い込むことも、そのバイアスを強めて更なるアイデアの飛躍を試みている証拠だといえます。

今では呼吸をするようにルーティン化した生き方ですが、吐き出す行為そのものはまた相応の苦悩を伴います。

隠すように仕込んだジップは首元で脱着可能

外側はジップを比翼で隠し目立たないように仕上げ、

内側も肌あたりが良いように調整

頭の中では数多くの情報が渦巻いてますし、物事全てにASK WHYをする性格。昔から記憶力に乏しい事も、その情報量を処理できずにいるだけと…最近は前向きに捉えるようになりました。

制約、すなわち”何かしらの問題”を解決する方法は数学や物理をはじめとするいわゆる生まれ持った左脳の良さと言われていますが、僕はアイデアやデザインの能力でしか切り拓くことが出来ないものがあると信じています。

ハイネックだったムートンコートがノーカラーのコートへ変化。

冬の入り口はノーカラー、真冬はハイネックとして季節に準じたスタイリングが可能。

世間として頭が良い と言われているのは前者ですが、例えば後者にもさらに光があたる時代がくればいいと。

アイデアはいいとしても、それをいかに自然に馴染ませるかはデザイン力次第。

外したネック部分はそのままスヌードとしてご利用可能。

3wayの利便性。アイデアとデザインでカバーした重要な核。

例えば記憶力が良ければ成績が良くなり、良い学校・職につける。

世間的にも評価は高く当然その分支払われる対価も高い。

しかしながら後者の場合はどうでしょう?

まだまだ肩身が狭いように思います。「頭が良い」って一体何でしょう。

この先の未来にそういった能力値が正当に評価される基準や教育が訪れることを僕は願います。

ECRU×BLK

話はそれましたが、右脳派は極めて後天的で一層の鍛錬が必要と感じます。生まれ持った高い感性が存在するとしてもそれは脳の設計上回路が1つ増えているのではなく、捉える領域がほんの少し広いだけというか。そこに大差はないかと思います。

COL.BLK/BLK

これを言い出すとDNAの問題になってきますが、やはりヒトである限り個別の生得性は存在しますし、知能が高くても経験を積まない限り無駄だと言うこと。

それを鍛錬で増幅させ、1つの回路として成立させたものだけがようやく能力として世に認められるのだと思います。左脳派にも当然いえることですが、いわゆる天才とは生まれ持った才でなく、圧倒的な努力の才を示しすことは周知の事実ですもんね。

その天才ぶり=努力ぶりは、言われないと気づかない部分、あるいは細部から滲み出てしまうものだと思います。世間一般で言われる天才にはなれませんが、努力はいくらでも出来るということ。

そんな人間になりたいといつも思います。

比較対象を変えるならばアスリートでしょうか。

例えばアスリートが腕立て1000回することは誰がみてもわかりやすい努力ですが、同じように、クリエイティブ側はとある物事を1000回の再構築、あるいは1000通りの違う視点から見直しているのだと思います。頭の中で物事をぐるぐるさせ脳を酷使する。後者の場合客観的には努力しているように見えませんよね。アウトプットして吐き出しまくっていれば別ですがそれで良作が出来るかどうかは別問題。

アスリートの身体が100疲れるのに対し、クリエイティブ側も脳が100疲れている状態。

ぼーっとしているように見えていて感覚としては腕立て1000回していることと変わらないと思うのです。それは1/1000のものを吐き出した時にようやく評価されること。

脳内でコスパよく創ってしまう人もいるのかもしれませんが、少なくとも僕は違います。

「論理が破綻している」というお声もあるかと思いますし少し誤解を招いてしまいそうですが、なんとなくイメージして頂ければとおもいます。

世界レベルのアスリートは今まで何万回、何億回ものトレーニングを行なった先にW杯やオリンピックへの道筋がありますが(もちろんそれだけではありませんが。)、しかし、クリエイション側はどうでしょう。

脳内では何万回何億回ものトレーニングをしているはずですが、身体つきが変わるわけもないですし結果としても表出しづらく実りにくいものです。

だからこそ僕は、

世界大会と変わらない「パリ」で挑戦を続けるわけです。

世界に出ればたかだか6年目の新人ですが、ASKYYを始めるまでにそのトレーニングが億回に到達している自負があるし根拠のある自信もある。

出場するだけうちは確実に強くなる。

ただの自己満足の作品ではなく、ご着用者あっての作品。 

体を包むアシンメトリーのジップ。センタージップと違い、体を保温。

せまい某界隈で真似事しかしていないブランドを見るとうんざりしますよね?うちの数年前の作品を真似て今だにそれに頼るっていう。残念でありません。

モノを世に出すにあたっての責任とプライド。

当然独りよがりの創作ではなく、お客様あって初めての衣服。服は着られなきゃ服ではない。

今作は特に「軽さ」を追求。

表地は馴染みのフェイクレザー素材を用いてマット感と柔軟性を付与。

今まで散々酷使してきたものを活かし、形として遺したい。

遺すだけでなく服は身につけることが出来る唯一のアート。

僕は何かを前進させるために使命感をもって物作りをしています。

その表地は先日のEASY TRACK PANTと同様の素材。

お持ちのお客様はセットアップでもご着用可能。

現実的に過ごす日々のなかで、

お客様の一部となれるような作品を作りたい と思い形にしました。

裏地は大変肌触りの良いフェイクムートン。

ムートンでありがちなごわつきや無駄な膨らみを抑え、ボリュームを調節。気軽に着用出来るイージーさ。

今思えば、22awは相対的に「攻めた」というお声も多かったように思います。

それは良い意味でもあり悪い意味でもあることは存じています。

あまりご購入頂けなくなったお客様も当然いらっしゃいますし、コレクション云々の前に環境が変わったお客様もいらっしゃいますし、逆にご購入数が増えたお客様もいらっしゃいます。

それはブランドを始めた以上永遠と抱えていく大きな課題ですが、その課題とうまく共存し、捉われすぎず強い覚悟のもと成り立っていくものです。

僕はアパレル業界こそ長いですが、シーズンの特色がなく、同じものを毎年作り続けて持続しているファッションブランドが生き残ったケースってほとんど聞いたことがないんですね。大抵は衰退の一途を辿っています。

「お客様に寄り添わせて頂く部分」と「これどうですか」「付いてきてください」っていう部分のバランスを心地よいところで保ちながら、今後も共に歩ませて頂けたら幸いです。いずれにしてもその後者がブレることはありませんのでご安心ください。

サイズ感やシルエットなどは少しの時代性を取り入れつつも、核はブレずに。

時代性はもとより、その時々の心情さえも反映した作品をまた23ssも創り続けていきます。古参と胸を張って頂ける1つのブランドに確実になりますから。

ムートン特有のボリュームを抑えた、細身のシルエット
冬場に着込むことを想定し、身幅はややゆとりをもたせている

 

「ブランドはストーリーである。」

という自己独学のもとに始めた者が陥る苦難も、全て学びに変えて、武器にしました。

22awは僕の中でも大きなターニングポイントになった気がします。

“NO LAYER” は自らへの枷。

歪みを生じさせ、逆説的に捉えること。

様々な思いで作り上げた22awの最終作。

品番は先頭をきる”M1″

販売方法:12/3(土)12時より直営・オンラインにて同時発売

価格:¥105,000(税抜)

何億もの思考を背負って生み出す、渾身の作品。

会心の一撃。

宜しくお願いします。

これが22awのKINGです。


HINECK MOUTON COAT

Code : 3/7
Season : 373
Model : M1
Color : ECRU/BLK,BLK/BLK 
Material :
SHELL / POLYESTER100%
LINING / POLYESTER100%
Size : 1,2,3

HIGHNECK MOUTON COAT
ECRU/BLK https://www.askyy-shop.com/items/69448048
BLK/BLK https://www.askyy-shop.com/items/69443330