改めてですが今期もお付き合い本当にありがとうございました。途中コロナ・ヴァイラス氏(19)が行く手を遮り妨害してきましたが、3月末がうちのヤマだったこともあり皆様のおかげで押し迫る彼の猛威から一心不乱に突っ走りギリ逃げることが出来ました。
とはいえ無傷では無く、大きく傷跡を残された部分も当然あります。
ヨーロッパは想像よりさらに経済状況がひどく、折角ASKYYを取り扱いたいとオーダー頂いていた海外の卸先店、影響をもろに受け、全てトんじゃいました。ここでは言ってませんでしたが。実は1ヶ月ほど前の話です。
本当の意味でのASKYYの海外進出は儚くも一瞬にして頓挫しました。(簡単に1文で済ませてますがその日の夜は悔しすぎて寝れなかったし、真っ暗になったパソコンのスクリーンには終始抜け殻が映っていました)
その分、より屈強な野心と精神力を得る事が出来たと、今はそう捉えています。
既に生産に入っていたのでその分に関してはがっつり食らいました。しかしアパレル全体で俯瞰した時、うちの様な小規模の個店とは比較にならないほど、より深刻なダメージを受けているところが山の様にあります。今回うちがこうむった痛手はまるで足元にも及ばないでしょう。
どれだけ大企業でも今は先行きが読めず不安でしょうし直近の秋冬シーズンにおいては予想すら出来ません。消費者の「欲」はたしかに最低限の水準までそぎ落とされるかもしれません。
しかし、生活様式の3原則として君臨する衣食住の1つ「衣」はその言葉通り、人の隣にあり続けると云うことを忘れてはいけないと思います。
そんな最低限だけの無味無臭の生活なんて何がおもしろいんでしょう。それは理性や本能のない如何にも機械的なそれと同じではないでしょうか。
例えばあることを我慢し、あと100円だして大盛りにすることで幸せを感じるように。ホテルの高級なデザートは高いけどベッドの中でだらしなく食べるコンビニデザートの方が幸せだったり。人の尺度により様々ですが、制約・制御がある中でしか生まれない少しの欲こそが私たちの人生を面白くしていると僕は思います。それは衣食住でもそれ以外でも全てにおいて。
手取り12万円で携帯が止まっていた20代の頃でも、僕は狭い部屋の隅でそういった人生観について深く思考し、誰よりも幸せを感じることが出来ていました。制約だらけの環境だったお陰で少しのことでも幸せを感じてたし、積み重なるほんの小さい欲達によって生かされてました。その時無理して買った物や事は今の僕を形成する上で重要なファクターであり大切な思い出です。
窮屈な部屋で馳せていた、壮大な夢。その相反するコントラストは、目を閉じ心臓の音を聞くことより生きている実感を感じます。
最低限というボーダーラインを飛び超えて生まれるその「欲」が一人一人の人生さえも超え、更にはこの社会を少しずつ面白くする・していると思うんですね。今のASKYYもきっとその延長上に在ります。
制約を抜け、手にした時や何かを体感した時の喜びは代え難いもので、生きている心地さえ感じるものです。金銭的・経済的な問題をどうこう言っているつもりはなく、精神的な本質の部分です。たとえそれが麻薬的で一瞬の作用でも、空虚で機械的な日常よりは余程いい。
だから、「薄れてはしまったが確かに残っている微かな欲」 の存在を信じて私たちは物作りや販売をしなくてはいけないし挑戦しているところがあってもいいと思います。アパレルにとどまらずそれは全ての仕事にいえると。コロナで全てが消えるわけではない。人間は根本がヒトである限り人間です。
少なくともASKYYぐらいは、その挑戦を続けていきたいと思うわけです。
欲していただける商品をどこまでご提供できているのか。シンプルに蓋を開ければアパレルってきっとそれだけのこと。
会社がうまくいってるからそんな事言えるんだよ って言われてしまえばそれまでですが、うまくいってるかなんて誰にもわからないし、どうしようも出来ない事はどうにかしようと僕は人生をかけてやってきました。
この令和の時代に、いまだ模倣に必死なところは必然的に淘汰されていきますし、独自性や強い特色がない企業もより厳しくなっていくでしょう。生物界における自然淘汰と同様、文化や経済にも似た様な摂理が働き、進化し変異あるものが生き残っていく。
どんな些細な変化でも、その時は失敗と思っても、それは立派な進化であって自己を確実に成長させますよね。それを繰り返し人は生きていく。それもまた小さな欲によるものであり本能である。「失敗」なんてそもそもこの世に無いですし、失敗という概念こそがそもそもナンセンスでダサいし大きな間違いです。
この自粛期間で何をしていたか。厳しい状況に打ち勝つ適応力をつけたか、生き抜く術を生み出したか。或いはただ傍観していたか。
それが表出し始めるここからの数ヶ月こそ、時代が変容する分岐点と思います。
元通りの世界には戻らず世界のあり方が変わっても、希望を捨てず、腐らず、狭くならざるを得なかった”欲” の存在に賭けて、真摯に物作りをしていきたいなと思った、
そんな20SSの終わり。
そして今日も僕は、
コンビニの安デザートを手に取り、ベッドに入ります。
昔よりも広い部屋で。
ASKYY TOKYO FLAGSHIP & INEFFICIENT
5/11〜 BY APPOINTMENT ONLY
(5/20-5/22 吉田不在)