世界から集まる服の群れを見る前に。
向かったのはフランス・Loire地方。
ファッションピープルやバイヤーとは逆方向。
進む 我が道。
バスに揺られて数時間。
そこは絵に描いたようなひとけのない田舎町。
早朝5時起きの眠気とぼんやりした朝焼け。懐古的な風景。
それらは現実をより一層曖昧にし、空想の世界へといざないます。
そんな白昼夢のさなか、
広大な土地に浮かび上がったのは城の美しい輪郭。
「人工物と自然」のコントラストの美しさを測るならそれは最大級のものでしょう。
ヨーロッパをしばらく1人旅していた時にも出会うことの出来なかった、この地方ならではの美しさがそこにはありました。
空気の冷たさ、遠くに聞こえる鳥の声。
歩むたびに鳴る砂利の音。それのみが、あたり一面に響きます。
観光客はほとんどいませんでした。
横を流れる川の音は緩やかすぎて聞こえないぐらい。
この空間だけが時間という激流に左右されず隔離され、ただ独立している様な。
とても静かな時間。
内部は巨大な螺旋階段。とても高度な設計
階段中心には光量を加味し作られた天窓。
開放的であるこの建築構造は、ロワールの様な寒い地方には不向きなようで、暖炉がいたるところに設置してあります。
薪のパチパチする音が高楼に響き、その匂いもまた心地よい。
当時のフランスでは過度だった装飾も、王の「見栄」によるものだそうです。
城壁などはなく無防備な裸の城。
狩猟用の別荘程度で考えていた様ですがそれがあってこその開けた自然と豊かな光景です。
お城の影がちょうど地平線と垂直になるのを待っている時。
中央の尖塔が宝のありかを示す様な、そんな魔法の映画を見ている様な童心が蘇っていました。
そして、シンメトリーでなくとも存在する美しさの定義をしばらく考察。
細部までに施された人間の知性と芸術を目の当たりにし、ただ息をのむばかり。
建築から学ぶことは非常に多く、それは服に於いても人生の哲学に於いてもいえます。
展示会で多くの服を見る前に、まず美しさや創造性とは何かを考えること。その本質で物事を解釈することの重要性はいつまでも忘れたくありません。
気候や地理に不向きな建築様式、誇張した装飾、無防備な城。
当時の「見栄」が創りあげた一見整合性のない産物が、当時統治していた人数以上の人の心を時を超えて動かしているのであろうから歴史は面白いです。
語弊があるかもしれませんが、服を1着つくるのも、建物1棟つくるのも根本は同じだと思っています。行程数は違えど同じ分野。
そのぐらいの気持ちをもって取り組んでいます。
このASKYYの服も、未来から見たら合理的でないかもしれません。
ですが───────
この生ける時代に良い意味で「見栄」を張り、堂々創り続けていきたいと思います。それがこの城を建てた王のように当時間違いだったとしても。
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